南伊豆町の地熱資源開発

町長インタビュー

南伊豆町の地熱資源開発とそれに伴う今後のまちづくりの可能性について、梅本町長にインタビューしました。 -ひとにやさしく 自然にやさしく 未来につなぐまちづくり- 伊豆町で地熱資源開発に関する2つの補助事業が始まっています。ここでは梅本町長が、地熱資源に対する想いや地熱資源とまちづくりの関わりについてお話しします。

―町長、本日は南伊豆町での地熱資源を活用したまちづくりについて伺います。どうぞよろしくお願いいたします。

町長
こちらこそよろしくお願いします。

―では早速ですが、南伊豆町では、かねてより地熱資源活用によるまちづくりの可能性を考えられており、本年度資源エネルギー庁の地熱開発理解促進関連事業支援補助金と独立行政法人石油ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の地熱資源開発調査事業助成金の2つの大きな補助事業が採択されました。まずこの2つの事業を行うねらいや目的についてお聞かせください。

町長
地熱資源は、発電のみならずさまざまな産業に活用できる大きな可能性をもつ再生可能エネルギーとして近年注目を集めています。では、なぜこの事業を南伊豆町で行うのか、この質問にお答えするにはまず、現在の南伊豆町がどのような問題を抱えているかを説明しなければなりません。風光明媚な土地が広がる南伊豆町は古くから伊豆最南端の温泉街として栄えてきましたが、バブル崩壊後、長らく続くデフレ経済などの影響によって、他の地方自治体と同様に町の存続を左右しかねない深刻な問題に直面しています。人口減少、少子高齢化の加速、雇用の縮小、産業の衰退による経済の悪化、特に主産業である農林水産業と観光業における収益の下落率は非常に大きくなっています。町としてはこうした課題を解決するために【第5次南伊豆町総合計画】を策定し、【1「ひとが動き、まちが動く」協働によるまちづくり】、【2「雄大な自然を守り、恩恵にあずかる」自然と共生のまちづくり】、【3「まちの魅力を全国に発信する」地域ブランド創造のまちづくり】の3つの基本理念を掲げ、今後、本町を支えていく若者や子供の世代がこの南伊豆町で安心して暮らせるように、未来につながるまちづくりに取り組んでいます。そして、この計画を実現していくための施策のひとつが、本町の地域資源を活かした「自然エネルギーの導入促進」です。太陽光発電や風力発電のようにすでに取り組みが進んでいるものもありますが、地熱資源による事業はそれらとは異なり、存在する地域が限られる資源を活用することになります。前日本地熱学会会長の江原幸雄先生の著書のタイトルに「地熱エネルギー=地球からの贈り物」とあるように、まさに南伊豆町が地球から授かった宝を扱っていく大切な事業になります。それだけに、従来の自然エネルギー利用とは異なる南伊豆町固有のメリットがあり、総合計画がめざす目標を実現させていくうえでも特に重要な施策としてとらえています。

データで見る南伊豆町の課題 ◎人口減少・少子高齢化 今、南伊豆町は、人口が減少し続けている状態で、30年間で約3,500人が減少し、現状では約9,000人となっています。そして2040年には約6,000人に減少することが見込まれています。また、少子高齢化も進み、2014年には65歳以上の人口が町全体の人口の約40%を占めるまでにいたっています。 65歳人口比40.5% (2014年) 静岡県内の市町で4番目に高い高齢化率

―地熱資源の活用を進めることによって、南伊豆町にさまざまなメリットがあるとのことですが、主にどのようなことが期待できるのでしょうか。

町長
ひとつは地熱資源を活用したまちづくりです。先ほども申しあげたように、南伊豆町は、さまざまな問題を抱えている状況下にあり、町の活性化に向けて大事なことは、新たな一歩を踏み出すことです。同じような境遇にある全国各地において、積極的に活性化に向けた独自の取り組みを行うところが増えてきています。例えば、今回見学会で訪れた上の岱地熱発電所がある秋田県湯沢市では、全国で初めて地中熱水(温泉熱)を利用した乳製品の処理加工施設を建設し、地域の特産品として製造販売をし、その他にも湯沢市内には地熱資源を活用した産業が集積しており、地元の雇用促進にもつながっていると聞いています。この他の地域でも、各種の産業やまちづくりに地熱資源を活用した取り組みが、近年の環境意識の高まりともあいまって着目されはじめています。本町においても、地熱資源を活用した様々なまちづくりのアイデアが町民の皆さまから提案されることを期待しています。
そして、もうひとつは地震をはじめとした緊急時の対策です。先の東日本大震災をきっかけに、地方自治体においては緊急時のエネルギー確保が喫緊の課題となっています。特に、東海地震が懸念される静岡県のなかで伊豆半島の最先端に位置する本町においては、交通機関の分断による孤立化とそれに伴う支援物資の遅延やライフラインの停止といったトラブルにも対応できる仕組みを整えておかなければなりません。例えば、地熱発電の稼働が実現した場合は、緊急時のエネルギー確保に役立てる可能性が生まれ、町民の生命を守るうえでも非常に重要な機能を果たします。

―では、南伊豆町では、まちづくりの具体的な取り組みとして、どのようなことが考えられるのでしょうか。

町長
私が地熱資源を活用したまちづくりで軸としているのは、もともとある南伊豆町の地域資源を活かすということです。南伊豆町にはまだまだ十分に活かしきれていない地域の宝がたくさんあると感じており、これらを有効活用していくことで今以上に南伊豆町が良い町として生まれ変わっていくのではないかと考えています。歴史を振り返ると、南伊豆町は永禄3年(1560年)頃に下賀茂で源泉が発見され、主に温泉と共に発展し続けてきました。現在では、休止井もありますが、多くの源泉が使用されており、町には一年中湯けむりが立ち上るのどかな風景が広がっています。また、温室によるメロン栽培、ウナギやスッポンの養殖、塩づくりなど、各種生産業への温泉熱利用が、かなり早い時期から進められていました。これらは、急激な経済動向の変化や自然災害などにより、一度は衰退してしまった産業でもあります。しかし、近年、地域の資源を活用したものづくりや地域おこしが全国で見直されてきています。また、生産効率性だけではない安全安心な生産物に対する価値付けも始まっています。この南伊豆町にも、海や山の恵みと温泉熱を利用する文化が昔から培われています。だから、今こそ地熱資源の開発とともに今ある町の魅力を再考し、より町の活性化につながる取り組みを行うことに力を注ぎたいと考えています。例えば、地熱を使った発電事業が一例としてあり、地熱発電の余剰熱や温泉を利用してハウス栽培や養殖業を行い、旅館でそれらを南伊豆町の新たなご当地グルメとしてアピールするのも地域を活性化していくためのひとつの方法ではないかと思います。他にも地熱資源を活用した各種の産業の現場を巡る観光ツアーの実施なども、付随した産業として実現できるかもしれません。ひとつひとつは小さなことでも、小さなことを結んでいくことで、南伊豆町全体が大きな魅力を創りだしていくことを期待しています。

―今お話しされたまちづくりのビジョンを実現するために、地熱資源の活用をどのように進めていくことが大事だと考えていますか。

町長
まず、過去の調査や文献によって南伊豆町の地下には、発電に適する地熱資源が存在する可能性が認められていますが、どれくらいの熱量が、どこにあるのかは把握できていません。そのため、今回【地熱資源開発調査事業】によって、地熱資源の位置や規模を探る調査を行います。それと並行して、町民の皆さまが地熱資源の活用について理解を深められるように【地熱開発理解促進事業】を実施していきます。特に南伊豆町の場合は、すでに地熱資源の活用が進む他の地域とは異なり、南伊豆町の中心部での調査・開発となっていくことが考えられるため、関係する町民の皆さまだけではなく町全体に丁寧に説明していきます。特に源泉所有者の方々のなかにはさまざまな不安を感じている方もいます。そういう方々との対話を繰り返し、「地熱資源への理解」を深めていくとともに、「地熱資源活用によるまちづくり」について、より多くの町民の皆さまと一緒に検討を重ねていく中長期的なプロジェクトとして取り組むことを目指しています。

―なるほどですね。町民の皆さまと対話しながら進めていくわけですね?

町長
その通りです。これからのまちづくりはトップダウンで行うのではなく、町民の皆さまとともに考え、様々なアイデアを盛り込んで進めることが重要であると考えています。これは、地熱に関することだけではありません。これからのまちづくりは、多くの方々の知恵を集め、協力しながら進めることが必要であり、それが次世代に向けた我々世代の責務であると考えています。本年度実施する【地熱開発理解促進事業】では、勉強会、見学会、ワーキンググループ等、町民の皆さまが参加できる様々な取り組みを進めています。是非、ご参加いただき貴重なご意見やご提案をいただきたいと思っています

―多くの町民の皆さまが参加されて、活発な議論になることを期待したいですね。これで、インタビューを終わりにしたいと思います。町長、お忙しい中ありがとうございました。

南伊豆町の宝を活かしたまちづくり ◎南伊豆町ならではのまちづくり 温泉はもちろん、さまざまな自然資源に恵まれた地域だからこそ、地熱資源の活用においても、今までに培ってきた南伊豆町ならではの文化や産業を掛け合わせ、さらに魅力ある南伊豆町らしいまちづくりを進められると考えています。 ◎南伊豆町ならではの産業・資源 豊富な湯量を誇る温泉 のどかで風光明媚な土地 温泉熱を活用した産業 豊かな自然の恵みを受けた水産物・農作物

地熱資源を活用することで 誰もが働きやすく、暮らしやすい 南伊豆町の可能性を探っていきます。  地熱を利用したハウス栽培 農作物の生産 養殖による魚介類の生産 南伊豆町の生産品を活用したメニューの開発  地熱を利用した発電 地熱を利用した材木の乾燥など林業の効率化 地熱を利用した住宅・施設(冷暖房・浴用等) 地熱をテーマとした観光スポットの開発  南伊豆町の地熱利用をアピール(観光テーマ化)

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